【book】1Q84 BOOK 1
村上春樹さんの2009年に大ヒットした本「1Q84 BOOK 1」をこの年末に読みました。
あいかわらず、すごい「吸引力」がある文章です。「吸引力」というのは、「ついつい文章に引き込まれて読んでしまう力」のことです。村上春樹さんは、この「吸引力」が多くの小説家の中でずば抜けていると思います。とにかく、一度読み始めると止まらなくなっちゃいますね。
村上春樹の長編小説というと、僕は「ノルウェーの森」、「海辺のカフカ」、「ねじまき鳥クロニクル」を読んだことがあります。「ノルウェーの森」は村上春樹の小説には珍しく、非現実的な部分がなく、真正面からの恋愛小説です。「カフカ」、「ねじまき鳥」は村上春樹らしいと言えますが、やはりそれぞれに個性があります。個人的には「ねじまき鳥」が好きなのですが、あの小説はラストがもう一つググッと来ませんでした。
今回の「1Q84 BOOK1」ですが、天吾という30歳前後の青年と、青豆というこれまた30歳前後の女性が主要な登場人物です。そして、この二人の物語が交互に描かれるという手法をとっています。終盤に、二つの物語が収束していくわけですが(BOOK2の話)、非常にうまくまとまっていると思います。村上春樹、うまいなぁと思いました。
文章自体はとても平易にできており、誰でも読めると思います。ただし、村上春樹の特長というか、超現実的(ハイパーリアル)なストーリーには好き嫌いが出ますね。実際、うちの母は「村上春樹の本はさっぱりわからんわ。」と言ってあまり読んでません。ちなみにうちの母が好きな作家は、宮尾登美子とか及南アサです。
僕は今回の「1Q84」は、大好きです。登場人物がそれぞれ悩みを抱えているのですが、ストーリー自体はそれほど重くありません。宗教団体なんかも出てくるのですが、やはりソフトに描かれていて、夢のように感じるところもあります。ただ、夢のように感じても、主人公たちの生活がすごくきめ細かく書かれているので、そこのバランスが絶妙なんですよね。引きつけられるポイントだと思います。
読売新聞でのインタビューで村上春樹がこう言っています。
【『1Q84』への30年】村上春樹氏インタビュー(上) : 出版トピック : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
日本人は1995年にたてつづけに起きた阪神大震災とオウム事件で、「自分はなぜ、ここにいるんだろう?」という現実からの乖離(かいり)感を、世界よりひとあし早く体験した気もする。僕の小説は、『ノルウェイの森』を除いて、いわゆるリアリズムの小説ではないが、それゆえ新しいリアリズムとして、世界中で受け入れられ始めているのを感じる。9・11以降はとくに。
(中略)
作家の役割とは、原理主義やある種の神話性に対抗する物語を立ち上げていくことだと考えている。「物語」は残る。それがよい物語であり、しかるべき心の中に落ち着けば。例えば「壁と卵」の話をいくら感動的と言われても、そういう生(なま)のメッセージはいずれ消費され力は低下するだろう。しかし物語というのは丸ごと人の心に入る。即効性はないが時間に耐え、時と共に育つ可能性さえある。インターネットで「意見」があふれ返っている時代だからこそ、「物語」は余計に力を持たなくてはならない。
あまりメディアに出てこなかった村上春樹が、阪神大震災とオウム事件で少しずつ社会と接点を持つようになった話はよく聞きます。今回の「1Q84」には、そういうエッセンス(学生闘争や新興宗教)がたくさん入っており、村上春樹なりの解釈が入っているように思えます。後の感想は、「BOOK2」に回します。